飲食店・カフェ・ゲストハウスの失敗しない店舗デザインを考えるステップ

さて、色々とコンセプトも固まり、物件を探し始め、なんとなくイメージに近い物件が出てきたりすると「早く契約しなきゃ」とか「早く店舗デザイン決めなきゃ」とか気が焦ってくると思います。

 

しかし、ちょっと待った!!!

 

その前に決めなくてはならない事が、まだまだあります。

 

この章は、失敗しない店舗デザインの決め方についてお伝えしていきます。

 

1 店舗デザイン依頼をする前に決めるべき6つのポイント

まず、当然ですが、いきなりデザイナーさんや建築士の方に、見積もりをお願いしても話は先に進めません。

 


そこで、最低限、聞かれる6つのポイントをまとめておきましょう。

 

 

予算

店舗デザインストーリー

店舗デザインイメージ

メニュー構成

厨房機材

ホールオペレーション

 

このように、良いデザインや建物を作る為には、事前に考えておくことが沢山あります。

 

順番に説明していきましょう。



①予算組み

さぁ、いよいよこれから実践編が始まります。

 

今まではご自身の頭の中や机上での事でした。


これからは、様々なプロや周りの人を巻き込んでいきます。

 

覚悟は良いですか?

そこで最も重要な事は「予算」を決める事です。

 

誰しも、ボランティアではありません。

 

 

当然ご自身も商売をするのですから、これが重要な事はご理解いただけるのではないでしょうか?

 

まず、きちんと「予算」を伝え、それで受けてもらえるのか確認しましょう。

 

 

規模や内容によって変わってくるのであくまでも概算ですが、

 

建物を新築で建てる場合、坪60万~100万円

 

中古物件をリノベーションする場合、坪40万~60万円

 

内装だけを改装する場合、坪20万~50万円

 

厨房機材は、100万~300万円

 

それ以外にも、上下水道の設備や駐車場の整備、庭や外構工事費、備品購入、エアコン設備、寝具、人材募集費、運転資金なども掛かります。

そろそろ、資金の調達の目途も立てなくてはなりませんね。



お金の事も重要ですが、巻き込む相手は「人」です。

 

コンセプトや取組み目的、そして何より、あなたの「想い」に共感してもらう事が重要ですよ!

コンセプトを作った時の一番初めの事を思い出してください。

 

この事業に取り組む意味、意義、目的もきちんと伝えて行きましょう!

 



②店舗デザインストーリー作り

 

基本的に、今まで作ってきたコンセプトをデザインに落とし込む骨子となる部分です。

 

ターゲットが「お店でどのように過ごしてもらいたいか」をストーリーとして言葉にしていきましょう。



 

 

例として、pole poleの店舗デザインストーリーをご紹介します。


日常から別世界に入り込むためのアプローチ。

 

アプローチを超えると、緑に囲まれたお店が現れる。

 

折角田舎のお店なので、自然光溢れる空間で、都会のギスギスとした生活を忘れよう。

 

スタッフは元気な掛け声というよりも、満面の笑みで「こんにちは!ようこそわざわざお越しくださいました。ゆっくりしていって下さいね!」という気持ちのお出迎えをします。

 

テーブルや椅子も温もりのある天然木を使い、色味は周りの自然と調和し、まるで森の中で食事をしているような錯覚を感じる。

 

「日本とは思えない」

 

壁は、自然素材の珪藻土を使い、新しいけど、どこか懐かしい、おじいちゃん家のよう。

 

夕暮れ時に、部屋の前のテラスで飲むシャンパンが最高!

 

スタッフとの会話も楽しみたいので、オープンキッチンがいい。

ベッドは間伐材を組み合わせた手作り。

 

木の香りに包まれます。

 

清潔感溢れる真っ白なリネンが夢の中へいざなう。

 

バスルームからも眩い緑が溢れる。朝起きた時のシャワーが心地よい。

 

朝食はレストランのテラスが特等席。

 

BGMなんていらない。小鳥の鳴き声が一番の幸せ。

 

pole pole店内写真

 

如何でしょうか?

 

pole poleにいらしたお客様がどんな過ごし方をしてもらいたいのか伝わりましたでしょうか?

 

このようなストーリーを考えておくと、デザイナーさんにもイメージが伝わります。

 

あなたのお店で、ターゲットがどのように過ごしてもらいたいのか?を考えてみてくださいね。

③店舗デザインイメージ固め


「店舗デザインストーリー」をデザイナーさんに伝え「あとはおまかせ!」でも良いのですが、これだけだと、イメージにずれが出てしまう事もあります。

 

そこで、具体的にデザインイメージを固める方法についてお伝えします。

まず一番の方法としては、実際に色々なお店を見て歩く。

 

と言うのが良いのですが、中々時間が掛かってしまいますよね。

そんな時の情報収集として有効なのが「雑誌」です。

 

特にこの「商店建築」という雑誌は店舗のレイアウトなども載っていて非常に参考になると思います。

 

 

 

https://www.shotenkenchiku.com/

バックナンバーも色々とあるので、ご自身がやりたい業態や席数のお店を参考にすると良いでしょう。

それと、海外の雑誌や写真集。

 

特に、建築やホテル系のものが参考になります。

 

 

私がpole poleのデザインを考える上で、アフリカやブラジルなどの建築物の雑誌を何冊も買いました。

 

気に入った部分をコピーしてファイルに閉じておきましょう。

 

 

 

そして、当然ですが、インターネットでも色々と情報が溢れているので、それも参考になるでしょう。

 

しかし、逆に情報があり過ぎて迷ってしまう事もあります。

 

そうならない為には、まず雑誌などで大枠の方向性を決めて、その後にインターネットで「情報の量を増やす」という順番が良いかもしれません。

あともう一つ絶対に使って欲しい、便利なツールとして「Pinterest(ピンタレスト)

 

というのがあります。

 

これは気に入ったイメージ写真から、それに似たイメージの写真が次々と連鎖して集める(ブックマークする)事が出来るツールです。

 

例えば、「床」とか「壁」とかと検索すると、色々なイメージ写真が出てきます。

 

そこで、方向性にあったものを「ピン(ブックマーク)」すると、それに似た雰囲気の写真が世界中から沢山集まってきます。

 

「テーブル」や「椅子」などもお気に入りをピンしておくと良いですね。

 

更に、ピンタレスト活用の応用編として「テーブルコーディネート」や「フードデザイン」なども沢山出てきますので、好みのイメージを集めておくと良いと思いますよ!

 

ピンタレストの使い方はこちらが参考になります↓

https://gaiax-socialmedialab.jp/post-29632/

これら集めたデザインイメージをデザイナーさんと共有する事で、デザインのブレが少なくなりますよ。

 

 

④店舗デザインとメニュー構成の関係


段々と、店舗デザインのイメージが固まってきましたか?

 

その次に考えなくてはならないのが、メニュー構成です。

 

「え、もうメニューを考えないといけないの?」

 

と思われた方も多いのではないでしょうか?

 

 

そうなのです。

 

メニュー構成が決まらないと店舗厨房スペースが決まりません。

 

厨房スペースが決まらないと、デザイナーさんも平面図を描く事が出来ないのです。



ここでは、レイアウトを決める為に考えなくてはならないポイントを押さえておきましょう。


・売上目標に対する席数/来客人数

・メニュー構成(焼き物、揚げ物、煮物・ゆで物、生もの、デザートなど)

・ドリンクメニュー構成(生ビール、日本酒、ワイン、カクテル、コーヒーなど)

・調理法からみた必要機材

・ストックスペース

・配膳スペース

・下膳スペース

・洗浄スペース

・片付けスペース

・スタッフ導線

・お客様導線

 

ふー。沢山ありますね。。。

 

しかし、これも避けては通れない道です。

 

 

⑤厨房レイアウトを考える順序


「厨房レイアウト」を決めるには沢山の事を考えなくてはなりません。

 

 

 

下記に、レイアウトを考える順序を説明していきますね。

 

まず、事業計画から必要な売上を出すための席数と来客人数を算出しましょう。

 

事業計画の作り方はこちら

 

そして、次にメニュー構成を決めて、調理方法から必要な機材をピックアップする。

 

当然ですが、ラーメン屋さんだったら、スープを温める機材とゆで麺機は必須ですよね。

 

天ぷら屋さん等であればフライヤーなどが必要になってくるでしょう。

 

ピザ屋さんならピザ窯も。

ドリンクメニューも考えるのを忘れないでくださいね!

そして、それら必要な食材をストックするスペースも必要です。

 

その為には、冷凍ものなのか、冷蔵ものなのか、常温保存できるものなのか?来客人数に応じて、どれぐらいのストックスペースが必要なのかも事前に考えておく必要があります。

それから、

 

出来上がった料理をホールスタッフに受け渡すスペース。

 

お客様が食べ終わった食器を下膳するスペース。

 

食器を洗うスペース。

 

洗い終わった食器を片すスペース。

厨房には、このようなスペースが必要となります。


そして、最も重要なのがスタッフの導線を考える事です。

 

どうすれば効率よく動けるかを考えましょう。

 

とは言っても、厨房スペースは大きすぎてしまうと、席数が取れなくなって事業計画に支障が出る場合もあります。

 

ここはお店を運営する上での生命線なので、慎重に行きましょう。

 

⑥導線を考える


まずは、自分でやりたい業種・業態のお店に実際に行ってみましょう!

 

そして、スタッフの導線を観察する。

 

とても勉強になりますよ。

 

 

 

スタッフの動きを見ていると、時にはスタッフ導線が重なり、ぶつかりそうになっているお店などもあります。

 

そうならない為にも、配膳場所と下膳場所の導線は分ける事だったり、厨房スタッフが右から左に大きく何回も移動しているようなレイアウトは効率が悪く、提供スピードにも影響を与えてしまったりするのが理解できると思います。

 

効率を考えたレイアウトは繁盛店になるうえで必須なんですね。

 

今は、インターネットで「厨房レイアウト ●●(業種)」と検索すると、色々なレイアウトを見る事も出来ます。

 

 

そのレイアウトを見ながら頭の中でシュミレーションをするのも勉強になるので是非やってみてくださいね!

2 心強い味方!厨房業者さんについて


前の章を読んで、厨房レイアウトを決めるのって大変そうだなぁ。。

 

と思われた方も多いのではないでしょうか?

 

 

 

そうですよね。

 

実際に大変なのです。

 

そこで今日は、厨房レイアウトを決める、心強い味方、厨房業者さんについてお伝えしたいと思います。

 

といっても、メニュー構成や価格帯、席数、来客数などは、あなたが決めなくてはダメですよ。

 

これはあなた以外、誰にも決められません。

これが決まったら、厨房業者さんに相談する事をお勧めします。

 

ところで、厨房業者さんって何?

 

という方も多いと思うので、簡単に。

 

厨房機材をトータルに扱っている業者さんの事です。

沢山の会社がありますが、下記には全国対応できる業者さんを少しご紹介。

 

・三栄コーポレーションリミテッド

http://www.san-ei-ltd.co.jp/

 

・ホシザキ

https://www.hoshizaki.co.jp/

 

こういった厨房業者さんは色々な業種、業態での設置経験も豊富で、厨房レイアウトのプロです。

 

メニュー構成、席数/客数を基に、必要な機材リスト、スペック、見積もりなどを出してくれます。

 

そして、予算が見合うのであれば、厨房レイアウト導線の作成まで相談してみましょう。

あなたの心強い味方になってくれますよ!


3 中古の厨房機材ってどうなの?

 

最近は、中古機材の売買も盛んですね。

 

 

 

安くて良い物が見つかればラッキー!ですが、これをひとつづつ自分で探すとなると結構大変。

 

サイズだったりが合わなかったり、昨日まであったけど、今日は既に売り切れていたり。。。。

 

保証やメンテナンス、設備図面の設計(これが厄介)、内装業者さんとのやり取り、機材の取り置きの事など、トータルで考えて決めましょう!



ここが決まると一気に進んでいきますよ!

 

4 ホールレイアウトについて

 

 

ホールレイアウトを考える上で、まずホールスタッフの役割を整理しましょう。

 

・電話対応

・お出迎え

・席へのご案内

・水やおしぼりの提供

・メニュー説明

・オーダーテイク

・ドリンク作成/仕込み(ホールが兼任する事が多い)

・ドリンク提供

・料理提供

・カトラリーチェンジ

・食器下げ

・追加オーダー

・お客さまとの会話

・お会計

・お見送り

 

など

 

これらの役割をこなしていきます。

 

これらの作業も厨房導線と同じように、お客様の満足度を上げながら、且つ効率よくするレイアウトを考える必要があります。

例えば、

 

まず、お出迎え。

 

よく、お店に入ったけれど誰も気づいてくれない。。。という経験ありませんか?

 

あれってちょっと残念ですよね。。。

 

これ、意外と考えられていないお店も多いのです。

 

まずは、入口部分をスタッフの誰かが常に視界に入るようなレイアウトにする事を考えましょう。



お水をつぎ足したり、カトラリーチェンジする頻度も高いです。

 

その都度厨房内に入っていては手間が掛かりますし、お客様にスピーディーに対応する事ができません。

 

こういったお客さまへの提供頻度が高いものはホール内に置いておく場所を作っておくと便利です。

 

また、ドリンクの作業場が厨房の一番奥だったりするお店がたまにあります。

 

これは最悪。

 

ドリンクを作る度にキッチンスタッフの後ろを通らなくてはならない。

 

これはキッチンスタッフに迷惑なのと、非常に危険です。

 

料理提供も、お店の一番端から出すよりも、ホールの真ん中あたりから出せると効率は良いですね。

 

厨房自体をどこに設置するかもオペレーションの効率化には重要なポイントとなります。



更に、お客様の導線や目線も考えておく必要があります。

 

スタッフが料理を運び出す場所の出入り口付近などは、せわしなく居心地が悪く感じたりします。

 

トイレの入口や、洗い場が丸見えだと、気持ちよく食事が出来なかったりしますよね。

 

死角が多いとスタッフ数を増やさなくてはならない可能性があるという事も注意したいですね。

そういった視点でホールのレイアウトを考えて行きましょう。

如何でしょうか?


デザイナーさんにお仕事を依頼するには、このように沢山の事を決めておかなくてはなりません。

 

作ってしまってからの変更は大掛かり。

 

計画の段階でどこまでシュミレーション出来るかがポイントですよ!


5 オープンキッチンか?クローズドキッチンか?

 

オープンキッチンとクローズドキッチンのメリットデメリットをお伝えします。

 

 

 

オープンキッチンのメリット

 

・お店にライブ感が生まれる

・お客さまとのコミュニケーションが生まれる

・お店に解放感が生まれる

 

 

オープンキッチンのデメリット

 

・匂いや煙が店内に回ることがある

・熱が客席に伝わり暑くなることがある

・キッチン内が丸見えになり常に整理整頓を意識しなくてはならない

・手元も丸見えで気になり、調理に集中できない

クローズドキッチンのメリット

 

・調理に集中できる

・少し散らかっていても気にならない

・客席に熱やにおい、煙が回りづらい

 

 

クローズドキッチンのデメリット

 

・閉鎖的な空間になる

・光を取り入れずらい

・客席の様子(反応)がわからない

 

 

如何でしょうか?

 

厨房レイアウトの参考にしてみてくださいね!

6 客室レイアウトを考える

客室のレイアウトを考える時に重要な視点が1つあります。

 

それは、

 

お客様が滞在される時に部屋のどの場所でくつろいでもらうか?

 

です。

 

それは、テラスだったり、窓際だったり、ソファーだったり、ベッドの上だったり。

 

pole poleではテラスが一番の寛ぎの場所。

 

 

 

各部屋にテラスをつけ、椅子とテーブルを配置。

 

そこでシャンパンを飲むのも良し、読書をするのも良し。

 

普段の生活では味わえない、緑に囲まれた空間で、のんびりと過ごしてもらう。

 

それが最高の贅沢になるはずです。

 

時を忘れてもらう為に、テレビは置きませんでした。

 

草木の葉擦れの音や小鳥のさえずりがBGMです。

 

このように、お客様の滞在ストーリーを考えて客室をデザインする事が出来れば、ターゲットにとって、かけがえのない宿になりますよ!


 

いかがでしたか?

 

デザインはただカッコいい、素敵、という要素だけではダメです。

そこで、お店を営業するには、動線や効率、お客様の居心地など、様々な角度から考えなくてはなりません。

 

このステップをしっかりと読んで、デザインを考えてみてくださいね!

 

  
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

よく読まれている記事