実際にゲストハウスを開業するには物件を手に入れる事が必要です。
ここでは、物件を探す為の、土地の事や大きさ、物件の種類や契約時に気を付ける事などを順に説明していきます。
目次
「物件探しで気を付けたい事 その① 用途地域編」
宿泊施設を立てる事が出来る場所に制限がある。という事をご存知ですか?
土地には「用途地域」というものがあります。
これは、その土地に建てられる建物に制限がある地域があるという事です。
例えば、今住んでいる家の目の前にいきなり工場が出来たらどうですか?
音とか匂いとか、ちょっと気になりますよね。
そういったトラブルが起きないように、予め定められたものが「用途地域」です。
その中で、宿泊業が営業出来る用途には制限がありますのでご紹介いたします。
宿泊施設が建てられる「用途地域」は以下となります。
①第一種住居地域(※床面積制限あり)
②第二種住居地域
③準住居地域
④近隣商業地域
⑤商業地域
⑥準工業地域
場合によっては、用途が定められていない地域や、今後定められる可能性のある地域などもあります。
また、近くに学校や児童施設などがある場合は、事前に確認が必要です。
まずは、ご自身が良いな?と思った土地・場所があったら、用途地域やその他に制限や規制が無いか、役場で必ず確認しましょう。
「物件探しで気を付けたい事 その② インフラ設備編」
用途地域が問題なければ、次に気を付けたい事「インフラ設備編」をお伝えしていきます。
インフラとは、上下水道や電力、道路など、生活や産業に欠かせない公共設備の事を指します。
都市部で生活をしている人にはちょっとピンとこないと思いますが、田舎でお店を営業しようとするのであれば、押させておきたいポイントです。
例えば、高台にある見晴らしの良い土地で、風通しも良く素敵な土地が見つかったとします。
まずはその土地までの道路が舗装されているのか?をチェックしましょう。
未舗装でも悪くはないのですが、雨が降った場合に車が登れないなどの可能性もあります。
道路を舗装するとなると、莫大な金額が掛かってくる恐れや、道路の持ち主(県や町、個人)などとの交渉も必要になってきます。
それと、未舗装の場合、上下水道や電力がその土地まで整備されていない事も多いのです。
そういった場合、上水道工事や浄化槽の設置、電気工事など、更なる追加費用が発生し、初期投資予想が大きく変わってきてしまう事になりかねません。
気に入った土地が見つかったら、不動産屋さんや建築業者さんからもよく話を聞いて、建物以外にかかる費用を算出してもらうようにしましょう。
「土地の広さはどれぐらい必要か?その① 建蔽率・容積率編」
土地の広さは、コンセプトによってさまざまな考え方があるので、一概には言えませんが、ここでは最低限知識として知っていてもらいたい部分をお伝えします。
土地の広さを考える上で3つのポイントがあります。
①建蔽率、容積率
②建物の大きさ
③駐車場の広さ
今回は、まずその①として、土地の建蔽率、容積率についてお伝えいたします。
【建蔽率、容積率】
この言葉をご存じでしょうか?
建蔽率(けんぺいりつ)とは、その土地に対して、何%の広さの建物が建てられるか。
容積率とは、その土地に対して、何%の容積(延べ床面積)の建物を建てられるか。
という割合を示したものです。
ザックリと簡単に、例としてお伝えします。
100坪の土地で建蔽率60%、容積率200%だとすると、平面の広さがMAX60坪で、建物全体の床面積がMAX200坪までの建物を建てる事が出来るという事になります。
この割合は、その土地の用途地域や場所、道路付けやその他の条件によって変わってきます。
これも役場で確認をしておきましょう。
必要な建物の大きさから逆算すると、必要な土地の大きさが出てきますね。
「土地の広さはどれぐらい必要か?その②建物の大きさ飲食店編」
建物を構成する要素としては最低限、飲食店と客室、スタッフ常駐用部屋が必要となります。
その中で、まずは飲食店の大きさ編をお伝えします。
飲食店の大きさは、業種や業態、客単価、店舗全体の大きさ、物件の形、オペレーション等によって変わってきます。
下記はあくまでも目安として掲載致します。
まずは厨房の占める割合を業態別にみてみましょう。
食事型レストラン・・・厨房比率40~50%
居酒屋・・・・・・・・厨房比率30~40%
カフェ・バー・・・・・厨房比率20~30%
考え方の基準として、以下を押さえておきましょう。
・手の込んだ料理になるほど、厨房比率が上がる。
・全体のお店が小さければ小さいほど、厨房比率が上がる。
次に残るホール部分の面積と滞在スタイルにおける、坪辺り席数を考えてみましょう。
ちょっと手狭スタイル・・・2~2.5席/坪
ゆったり滞在スタイル・・・1.5~1.9/坪
例えば、15坪の食事型レストランだとした場合、
15坪で厨房比率40%=6坪が厨房、9坪が客席面積となります。
そして、ちょっと手狭スタイルで考えると、
9坪×2.5席=22.5席
となります。
事業計画やオペレーションを考慮し、飲食店に必要な大きさを割り出しましょう。
「土地の広さはどれぐらい必要か?その③建物の大きさ客室編」
客室の大きさ
簡易宿泊所の場合、客室の延べ床面積が33㎡以上(宿泊者の数を十人未満とする場合には、三・三平方メートルに当該宿泊者の数を乗じて得た面積)以上であること。
と定められています。
その他にも行政によって、色々な規定が違う可能性があるので、必ず役場に確認をしてくださいね!
ザックリと肌感でいうと、10坪程度で2部屋ぐらいでしょうか。
当然ながら、お客様から受ける単価や滞在スタイルによって変わってきますので、じっくりと考えましょう。
スタッフ常駐用の部屋
基本的にスタッフは施設の近隣に滞在している必要があります。
近隣という定めがあるのですが、具体的な距離などは特に定めがありません。
これも行政によって考え方が変わりますので、これも必ず確認しておきましょう。
施設の近くに常駐できない場合は施設に部屋を設ける必要がありますので忘れないようにしましょう。
スタッフ常駐用の部屋の大きさは経営者の考え方次第です。
狭すぎては居心地が悪いですからね。
そして、平屋なのか、2階建て以上なのかによっても必要な土地の広さも変わってきますね。
じっくりとプランニングしましょう!
「土地の広さはどれぐらい必要か?その④ 駐車場編」
意外と盲点になるのが、この駐車場の考え方です。
都市部で生活をしている人にとってはあまり馴染みが無いかも知れませんが、田舎で生活する人にとって、車は無くてはならない存在です。
場合によっては一人一台でご来店されるケースも。
では一体、何台分の駐車場が必要なのか?
まず駐車場の数を考える上で決めなくてはならない事が、席数とスタッフ数です。
特に、スタッフは一人一台で来るケースも多いので、必ずカウントしましょう。
例えば、20席、レストランスタッフ4名、ベッドメイクスタッフ4名だった場合、
理想は、「席数+スタッフ数」の28台分あれば安心ですが、
最低でも「席数×50%+スタッフ数」の18台分は欲しい所です。
そこまで取れない場合であれば、スタッフ用は停めづらい裏手や少し離れた場所を借りるなどして確保できると良いですね。
次に車1台当たりどのぐらいのスペースが必要かを考えてみましょう。
基本的に、1台あたり、「幅2.5m×奥行5m」は欲しいですね。
土地の形状によっては、通路幅も必要となりますので、一概には言えません。
先ほどの例18台を横並びに駐車できるスペースを確保しようとすると、
2.5m×5m×18台=225㎡=約68坪
必要となります。
建物をプランニングする時に忘れずに駐車場の事も考えて進める事が大切です。
コーベルジュ(気軽に泊まれる飲食店)を運営する上では、最低でも100坪~200坪は欲しい所ですね。
ひょえーっ!!!!
東京では考えられない大きさ!
とビックリされた方も多いのでは?
しかし、土地の安い田舎だからこそ、出来仕組み。
土地の値段はピンキリですが、坪1万円を切る土地なども見つかるかも知れません。
じっくりと探してみましょう!
「新築か居抜きかコンバージョンか?」
物件を探す方法として、3つのパターンが考えられます。
①新築で土地から探す
②居抜き物件(中古の民宿・ペンション物件)を探す
③古民家などをコンバージョン(住居から用途を変更)する
それぞれメリット・デメリットをお伝えします。
①新築で土地から探す
メリット
・理想の雰囲気、形、レイアウトが叶う
・新しい価値観をゼロから想像できる
デメリット
・予算が少し高い
・社会問題である、空き家問題を解決できない
②居抜き物件を探す
メリット
・予算を一番安く押さえる事が出来る可能性が高い
・既に顧客がついていて、それを継承する事が出来る可能性がある
デメリット
・良い物件は意外と高い
・安い物件は場合によって、改装費が追加で掛かる可能性がある
・安い物件は借地契約であることが多いので注意が必要
・借地権の場合融資を受けづらい事がある
③古民家などをコンバージョンする
メリット
・空き家問題の解決になる
・センス次第で流行りの雰囲気に出来る
・外国人旅行者に人気
デメリット
・改装費が意外と掛かる(場合によっては新築と同じぐらい)
・建てた時の図面や書類が無い事が多く、問題が出る事もある
・壁とか床を壊してみないと、工事の範囲が分からない事もある
・用途変更に費用と時間がかかる
如何でしょうか?それぞれにメリット・デメリットがありますが、物件は出会いです。
色々な角度から物件探しをしてみましょう!
「理想の間取りを手書きしてみよう!」
ある程度出店のイメージが固まってきたら「理想の間取りを手書きしてみよう!」という事をお伝えします。
私も、出店する前に自分で理想の間取りを手書きしてみました。
下手でも、実際とは違ってきても、何でも構いません。
ここで重要なのは、今、頭で描いているものを一度形として落とし込む作業をする事です。
そうする事で、夢が夢でなく、やっと実現に向けて一歩前進しているのを感じる事が出来るでしょう。
お客様が、どういった導線でお店に入り、どこでお出迎えして、お部屋のここで、こんなふうに寛いで、レストランでの立ち位置はここで、お客様がこんな笑顔でここに座って。。。。
など、実際の営業をイメージしながら描いてみてください。
ここが一番楽しい所です。
そして、これを作る事で、実際にどれぐらいの大きさの建物が、事業計画にあっているのかなども、実感する事が出来るようにもなります。
そうする事で物件探しも具体的に進んできますよ。
是非一度トライしてみてください!
「土地・建物契約で気を付ける事」
色々とデザインやレイアウトのイメージが固まったら、本格的に物件探しがスタートとなります。
その中で「土地・建物契約時に気を付ける事」をお伝えします。
賃貸にしても、売買にしても、開業する為に、資金調達をするケースが多いと思います。
その時に気を付けなくてはならないのが、良い物件が出て来たら直ぐにでも契約といきたい所ですが、基本的に契約をする上では、申込金や手付金が必要となります。
そして、万が一、資金調達に失敗してしまった場合、この申込金や手付金は返ってきません。
それを避ける為に、申込時に「資金調達が出来た場合に契約します」という特約条件を付けて申込をする方法もあります。
しかし、他に資金のある契約希望者が出てきた場合、その人が優先となってしまい、物件取得が出来ないリスクもあるので注意が必要です。
このポイントは重要な事なので、不動産屋さんと相談してみてくださいね。
「設計・施工業者さんを選ぶコツ」
土地も良いのが見つかり、さあ、設計の見積もり取ろうと思っても、いったい誰にお願いすれば良いのだろうか?
そんな悩みありますよね。
まず、地元の工務店さんに頼むのが安く済むコツです。
基本的に、他地域の施工会社さんの場合、工事している期間の滞在費が掛かってしまいます。
それが無いのが地元の工務店さんの良さです。
そして、宿泊施設を作ったことのある工務店さんがベスト。
宿泊施設を作る場合の法令や条例はかなり細かいので、経験のある方の方がスムーズです。
見つけられない場合は、宿泊業に強い、行政書士か設計士を入れた方が良いかも知れません。
作ってから、許認可が取れないとなったら大変!
※こちらで、ザックリとした簡易宿泊施設を作るガイドラインをダウンロードできます。(厚生労働省発行:簡易宿泊所許可手引き)
法令や条例は地域によって違ってくるので、これはあくまでも参考程度で。
許認可の窓口は各自治体の保健所が受け持っていますので、まずはそこに相談しに行ってみましょう!
さぁ、いよいよですね!!
「出来る事は自分でやってみよう!」
pole poleを作るときに、お金が無くて、時間だけがあった私は、内外装工事を、自分で手を動かせる部分はやってみました。
どんな事をやったかというと
・柱になる丸太の皮むき
・外壁のコーキング
・外壁のモルタル左官
・外壁のペンキ塗り
・内壁の珪藻土左官
・天井と床のペンキ塗り
などなどなど
テーブルやベッドなんかも大工さんに教えてもらって作りました。
仲間にも手伝ってもらったり、かなり大変でしたが、今では良い思い出です。
いらっしゃるお客様に「この壁、自分でやったんです!」って言えるのもコミュニケーションとしても面白いですしね。
また、自分で手を動かしている所をSNSなどで発信すると、それが事前のPRになったりもします。
ここまでやるのは大変ですが、少しでも良いので自分で手を動かすと、愛着もわいて良いかも知れませんよ!